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SEI子さんと学ぶ もっと知りたいあの製品技術

今月の注目製品
アルミハーネス
製品データ
アルミハーネス

ワイヤーハーネスって何?

ボタンひとつでエンジンがかかり、後部座席でもDVDを観ることができる…。自動車の機能増加に伴い、搭載される電子機器は増加しています。それらの機器をつなぎ、さまざまな電気、信号を車内のすみずみまで伝えるのが、自動車内に張り巡らされた電気配線網「ワイヤーハーネス」です。人間に例えると、血管や神経に相当する重要な部品です。

複数の電線を束ね製品化しており、自動車1台でワイヤーハーネスに使用される電線は500~1,500本になります。合わせると、その電線の長さは約2km、重さは約20kgにもなります。これは自動車の全体重量に対しては約2%程度ですが、環境にやさしい自動車が求められる現在、国内外問わず軽量化による燃費改善が必要と認識されており、ワイヤーハーネスの軽量化も課題の一つとなっています。

アルミハーネスの特長は?

高強度アルミ合金電線
高強度アルミ合金電線

ワイヤーハーネスに使用される電線は、導電率(※1)に優れた銅電線の使用が一般的ですが、車両軽量化に応えるため、当社グループは通電性能を銅と同等、かつ重量を半分に抑えたアルミ合金電線を新規開発しました。この電線を用いた「アルミハーネス」を2010年より販売しています。ただし、この時点では、耐振動性が銅に劣り、適用範囲が自動車室内やインパネ(※2)配線などに限定されていました。

2015年、当社グループの技術力を生かし、銅を超える強度を持つ高強度アルミ合金電線の開発に成功。これにより、エンジンの周囲など、振動が激しい部位へのアルミハーネス搭載が可能となりました。

軽量化に加え、アルミは銅に比べ埋蔵量が数倍多く、希少資源の節約にも貢献します。

当社のアルミハーネスは国内外の自動車メーカに評価していただき、数多くの車種に採用され、自動車の軽量化・低コスト化に貢献しています。

※1
導電率:電気の流れやすさを示す指標。
※2
インパネ(Instrument panel):運転席にある計器盤。
技術者に聞きました
(株)オートネットワーク技術研究所
電線・材料研究部 電線研究室
今里 文敏
今里 文敏

お客さまからどのような反応をもらっていますか?

自動車は気温や湿度の異なるさまざまな環境で使用されるため、ワイヤーハーネスに使用される電線には、高温や振動にも耐えられる性能が要求されます。今回開発した高強度アルミ合金電線は、その環境下を想定した厳しい「意地悪」な試験にも十分な性能を示すことができました。その結果、お客さまからも高い評価をいただくことができ、世界で初めてエンジンハーネスとして搭載されることになりました。

今後は、従来から使用されている銅を導体とした電線の置き換えをさらに進めるため、アルミ電線のラインナップ拡充をおこない、自動車の軽量化による、燃費改善・CO2排出削減に努めていきます。

開発・製造する上で難しかったことは何ですか?

ワイヤーハーネス用電線として強度と導電率の両立が求められる中、既存合金では要求を満たすことができず、アルミ合金の新規開発に取り組まなければなりませんでした。特に、エンジンハーネス用のアルミ合金は、銅以上の強度を有しながら、導電率も高く維持することを求められ、合金成分や熱処理条件には細かな調整を必要とし、苦労しました。

また、耐振動性を考慮し0.155mmの極細線を導体素線に採用したために、電線の製造がより難しくなりましたが、従来の電線製造にはない加工技術を確立し、この課題を解決しました。


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